SDGsへの取組について
ホタテの貝殻など、 廃棄物を再活用した
“循環型”の靴づくり
突然ですが、皆さん「貝」と聞くとなにを思い浮かべますか?
農林水産省が調査した2020年の国内貝類別漁獲量は、あわび類が669t、サザエが4,609t、あさり類が4,305tですが、ホタテはなんと346,013tと他の貝類に比べて抜きん出た量の漁獲量となっています。
そんなホタテですが、実は環境問題と密接に結びついた貝でもあります。
他の貝類に比べて漁獲量が多い分、廃棄される「貝殻」も大量に発生してしまいます。
2020年に発生した国内の水産系廃棄物は293,643tで、その内ホタテの貝殻が占める割合はなんと43.2%。ホタテの貝殻はさまざまな活用方法があり、リサイクル率は99.9%とほとんどが再活用されていますが、「じゃあ問題ないじゃないか」ということではありません。逆に言えば、リサイクルをしなければ大量の廃棄物が発生してしまうため、高いリサイクル率を維持していくことが、持続可能な社会をつくるためには必要不可欠なのです。
靴や生活用品の企画・製造・販売などを行っている株式会社ロカシューも、ホタテの貝殻の特性を生かしたオリジナル商品を企画・開発し、ホタテのリサイクル率維持に貢献しています。
ホタテの貝殻で、“靴のデメリット”
を根本から解決
ホタテの貝殻の廃棄問題と、靴内の悪循環をどちらも解決
ホタテの貝殻は高温で燃やすと酸化カルシウムとなり、優れた防臭作用や除菌・抗菌作用をもたらします。そのままだとアルカリ性が強すぎて人体に悪影響を及ぼしてしまいますが、水を加えると、作用は引き継いだまま食品添加物にも使用されている水酸化カルシウムになります。
ロカシューではその利点に着目し、廃棄されたホタテの貝殻を回収して水酸化カルシウムをつくり出し、中敷きなど靴の素材に練り込み、靴自体が保つ限り半永久的に防臭・除菌・抗菌作用を発揮する商品を開発しています。
私たちは1日に足の裏から約コップ1杯分の汗をかいており、靴の中は水分の逃げ場が少ないため、どうしても高温多湿となってしまい、雑菌が繁殖して悪臭の原因である「イソ吉草酸」が発生しやすい環境となりがちです。ロカシューが開発している商品は、そんな靴がもっているデメリットそのものを根本から改善するものです。また素材自体が除菌作用を持っているため、特に何もしなくても効果があるのも魅力のひとつです。
また、まな板など調理関係のプラスチック製品にも練り込むことで、安全・安心な食事づくりに寄与する商品も作られています。
におわなインソール
ホタテ貝殻を再利用した地球に優しいインソール
本来なら廃棄となるホタテ貝殻を再利用した、安全で環境に優しい天然成分100%の抗菌剤を「におわなインソール」に使用しています。
強アルカリ性のため、抗菌・消臭効果を発揮します。水虫の原因の1つでもある白癬菌にも効果があることが実験データでも実証されております。インソールでいつも清潔で快適な靴内環境へと導きます。
損得より、善悪が大切。
ワクワクできるモノづくりを
タイヤの廃材でサンダルを。さまざまなアップサイクル型商品が生み出されています。
ロカシューが大切にしていることは、「損得より、善悪で仕事をする」ということ。
SDGsが普及する以前から、そのテーマの下で事業を展開してきました。
『損得ではなく、善悪で仕事をする』という言葉に出会ったのは、大企業の経営者も参加する『商業界ゼミナール』という合宿型のセミナーでした。近江商人の“三方よし”の精神にもとづいた商文化に触れて、私も受け継いでいきたいと強く思いました。いいモノづくりを行うには、ワクワクする気持ちが大切だと感じています。モノづくりを楽しむことなく、しんどい思いをしていたら、結局それは作ったモノに表れてしまいます。前向きな気持ちでモノづくりを行うためには、損得ではなく“善悪”で物事を判断していくことが必要ではないでしょうか。私たちはホタテの貝殻の再活用をふくめて、さまざまなアップサイクル型の商品を企画・開発しています。自分たちの作ったものが、誰かの困りごとを解決し、社会の未来のためになる。そんなポジティブな展望をイメージできるからこそ、私たちはワクワクしながら仕事ができているのだと思います。
社会・環境・ビジネスへの影響
■身体にも地球にも優しい抗菌製品
■不要なものに新たな価値を与えて循環させる
■SDGsが事業の追い風に
ロカシューが作るホタテの貝殻を活用した抗菌製品は、全て自然由来で作られており、また食品添加物にも指定されている水酸化カルシウムが原料のため、人の身体にも優しい製品です。例えば子育てをしている家庭で、赤ちゃんが舐めてしまっても危険性がありません。
ホタテの貝殻のほかにも、タイヤの廃材から作られたサンダルなども作られており、不要とされていたものに新たな価値を付け加えた、循環型の商品が生み出されています。
そのようなロカシューのモノづくりですが、当初はなかなか受け入れてもらえずにいたそうです。昨今のSDGsの広がりが、追い風となったと思います。
『面白いことをやっているね』といった反応は頂けていましたが、そこ止まりでした。確かに、普通のケミカルな抗菌剤の方が安価ですから、採用する側もなかなか判断が難しい部分があると思います。しかし、SDGsをはじめ、経営と社会貢献を融合・両立させる新たな企業のあり方が世界的に求められている昨今の状況が、私たちの追い風になりました。少しずつ採用いただける企業も増えてきましたし、私たちもSDGsという具体的で分かりやすい目標ができたおかげで、新たなアイデアの発想などがしやすくなりました。
全部が土に還る靴づくりと
SDGsが“当たり前”になる環境づくり
靴づくりのすべての工程で、“土に還る素材”を使用
靴のオーダーメイドでも、3Dプリンターでの型づくりが普及し始めていますが、その素材は一般的なプラスチックが使われることが多いためリサイクルが難しく、修正すればするだけゴミが発生してしまいます。
ロカシューが現在開発中のオーダーメイドシステムでは、型を出力する前にゴム製のテストシューズによる仮合わせを導入しています。足がすれる箇所のゴムが伸びて色が変化することで、型を出力しなくとも視覚的に分かりやすく修正箇所をチェックできるようにして、無駄な型づくりのコストや素材の消費を削減しています。同時に、型の素材に土に還る生分解性プラスチックを使うことで、靴づくりによる地球環境の負荷を軽減しています。
また、自分たちを含めたSDGsによるモノづくりの課題として、「関心のある層にしか普及できていない」という課題があると思います。
人が『安くて便利なもの』を求めるのは、当たり前のことです。SDGsなど、環境に配慮した製品はどうしても単価が高くなってしまいますが、品質と価格のバランスが一般的な製品と近くならないと、真の意味で普及することはないと考えています。そのためにも、まずは仲間たちを増やさないといけない。単価を下げるには、“量”が必要です。積極的にさまざまな人々や企業と関わり、取り組みを広げていきたいです
メッセージ
皆が自分の足元を照らすことで、社会全体が明るくなる
平安時代初期を代表する僧である「最澄」の教えの1つに、「照千一隅(しょうせんいちぐう)」という言葉があります。「一人ひとりが自分の周りに明かりを灯せば、社会全体が照らされることになる」と解釈されています。この考え方が、私たち中小企業とSDGsにとってとても大切だと感じています。私たちが自分の足元をしっかりと見て、周囲を照らしていくことで、社会全体が明るくなる。一つひとつのアクションは小さくとも、それが積み重なればとても大きいものになります。
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